光重合開始剤は、紫外線(UV)や可視光などの光を吸収して化学反応を開始させる活性種(ラジカル、カチオン、アニオンなど)を生成し、それによって重合反応を開始させる化学物質です。
主な用途としては、プリント配線板用レジスト、半導体用レジスト、液晶ディスプレイ用レジスト、UVインク、UV接着剤などの分野で使用されます。
光重合開始剤『Nikkacure』
Nikkacure
光重合開始剤『Nikkacure』とは
感光性材料は塗料、印刷材料、フォトレジスト、接着剤等の用途で幅広く使用されており、その中でも光重合開始剤は感光性樹脂を硬化させる上で重要な成分の一つとして知られています。
弊社では光ラジカル重合開始剤を取り扱っており、紫外線を照射することでラジカルを発生し、連鎖的に重合反応を起こすことで硬化膜を形成します。

用途例

スマートフォン

PC

タブレット

液晶
当社の光重合開始剤『Nikkacure』3つの特徴
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01
- オキシムエステル型の高感度品
- 長波長域に吸収を有し、感度が高いため、深部硬化性に優れます。
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02
- 酸素阻害を受けにくい
- オキシムエステル開始剤の中でも酸素阻害による失活が少ない。
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03
- 強い金属耐性
- オキシムエステル開始剤の中でも金属に触れることによる分解が少ない。
製品ラインナップ
サイト上の色の表示部分に関し、実物とは色味が多少異なります。
実際の色味の確認をご希望のお客様は、下記お問い合わせ先まで資料のご請求をお願い致します。
Nikkacure YJ-04(T)
一般的なオキシムエステル型開始剤と比較してi線、h線、g線の吸収が高く、ghi線露光での硬化性に優れる
一般的なオキシムエステル型開始剤と比較して深部硬化性に優れている
電子材料用途、ディスプレイ材料用途での実績あり
Nikkacure IW-15
一般的なオキシムエステル型開始剤と比較してi線、h線、g線の吸収が高く、ghi線露光での硬化性に優れる
一般的なオキシムエステル型開始剤と比較して深部硬化性に優れている
電子材料用途、ディスプレイ材料用途での実績あり
溶剤への溶解性が極めて高い(PGMEAに50%以上溶解)
Nikkacure TG-10
一般的なオキシムエステル型開始剤と比較してi線(365 nm)の吸収が高く、i線での硬化性に優れる
高感度である為、少量の添加で効果が有り開始剤自身の着色の影響が少ない
電子材料用途、ディスプレイ材料用途での実績あり
溶剤への溶解性が極めて高い(PGMEAに30%以上溶解)
Nikkacure TG-05
一般的なオキシムエステル型開始剤と比較してi線(365 nm)の吸収が高く、i線での硬化性に優れる
高感度である為、少量の添加で効果が有り開始剤自身の着色の影響が少ない
Nikkacure TKG-01
外観が白く、低着色、無着色用途に適する
溶剤への溶解性が極めて高い(PGMEAに30%以上溶解)
365nmに吸収がほとんどなく、高圧水銀灯によるブロードバンド露光での硬化に優れている
スペクトル

よくある質問
光重合開始剤は発生する化学種によって、3つのタイプに分けられます。
- ●ラジカル重合開始剤
- 光を吸収して非常に反応性の高い「ラジカル」を発生させ、アクリル樹脂の重合反応をスタートさせます。
- ●カチオン重合開始剤
- 光を吸収して「カチオン(=酸)」を発生させ、エポキシ樹脂やビニルエーテルの重合反応をスタートさせます。
- ●アニオン重合開始剤
- 光を吸収して「アニオン(=塩基)」を発生させ、エポキシ樹脂やビニルエーテルの重合反応をスタートさせます。
光重合開始剤を使用した重合反応は、主に以下の3つのステップで進行します。
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1.光の吸収:光重合開始剤が特定の波長の光を吸収し、エネルギー準位の高い「励起状態」になります。
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2.活性種の生成:「励起状態」になった開始剤が分解(=開裂)し、重合反応を引き起こす「活性種(ラジカル、カチオンなど)」を生成します。
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3.連鎖反応:生成された活性種が樹脂の元となるモノマーに次々と作用し、連鎖的に反応が進行することで全体が硬化します。
酸素阻害とは、ラジカル重合を行う際に、空気中の酸素が重合反応を妨げ、重合反応がスムーズに進行しなくなる現象を指します。
特に、ラジカル重合を利用して硬化させるアクリル系で問題になりやすい性質です。
- ●酸素阻害のメカニズム
- 酸素阻害は、主に以下のような3つのステップで進行します。
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光重合開始剤が光を吸収してラジカルを生成する。
※空気中の酸素(O₂)は三重項基底状態にあるため、ラジカルと非常に反応しやすい性質をもっています。 - 酸素がラジカルと反応してペルオキシラジカルを生成する。
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生成されたペルオキシラジカルは、重合を進行させる力が弱いため、重合反応が進みにくくなります。
※ペルオキシラジカルが他のラジカルと反応して重合を停止させることもあります。
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光重合開始剤が光を吸収してラジカルを生成する。
- ●酸素阻害の影響
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表面未硬化: 空気に最も触れている表面で酸素阻害が起こり、塗膜や樹脂の表面だけ硬化が進まない。
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硬化不良: 全体的に硬化が不十分となり、期待した性能(物性)が得られない。
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物性の低下: 硬化が不十分なため、硬化物の機械的強度や耐摩耗性などが低下する。
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- ●酸素阻害を防止する方法
- お客様の目的や環境に合わせて、以下のような対策をご提案しております。
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不活性ガス雰囲気下での硬化:窒素やアルゴンなどの不活性ガスを使って酸素を追い出し、酸素阻害を防ぐ。
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添加剤の活用:酸素阻害を抑制する効果のあるアミン系やチオール系の添加剤を使用すると、添加剤が酸素と反応して阻害を抑制します。
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露光波長の選択:高出力・短波長の紫外線を利用し、酸素と反応するよりも速く硬化させることで影響を抑えます。
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開始剤の増添:酸素によって消費される分を考慮し、光重合開始剤の量を増やす。
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深部硬化性とは、光で硬化させる樹脂や材料において、表面だけでなく、厚みのある材料の内部まで均一に硬化する能力のことを指します。厚みのある塗料や接着剤などでは、この能力が非常に重要になります。
- ●深部硬化性の重要性
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厚膜コーティング:厚みのある塗膜を形成する場合、表面だけが硬化して内部が未硬化だと、塗膜本来の性能が得られない。
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接着:部材同士を接着する際、接着剤の内部までしっかり硬化しなければ、十分な接着強度が得られない。
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- ●深部硬化性に影響する要因
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光の透過性:短波長の紫外線(UV)は吸収されやすく、深部まで届きにくい。一方、可視光(400〜500 nm)は透過性が高く、深部硬化性を向上させます。
顔料やフィラーが多いと光が散乱・吸収されやすくなり、硬化が進みにくくなります。 -
光重合開始剤の選択:露光波長のスペクトルに適合した光重合開始剤を選ぶことで、効率的に深部まで硬化できます。
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酸素阻害:表面で酸素がラジカルと反応し、重合を阻害することがあります。酸素阻害が強いと、表面は硬化しにくくなり、内部の硬化も阻害される可能性があります。
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モノマーの種類:低粘度モノマーは拡散が良好でラジカルが移動しやすく、深部まで硬化しやすくなります。
高粘度モノマーでは、硬化が進みにくくなる場合があります。
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深部硬化性を高めるためには、以下のようなアプローチが有効です。
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長波長の光を利用する:材料内部まで透過しやすい可視光や近赤外光を使用する。
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最適な光重合開始剤の選択:長波長の光でも効率よく反応する開始剤や吸収スペクトルが材料に適した開始剤を選択する。
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光の出力を上げる:高出力の光源を使用し、材料内部まで十分なエネルギーを与える。
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光拡散剤の利用:光を均一に拡散させる材料を添加することで、光の到達範囲を拡大させる。
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蛍光剤の利用:蛍光剤を添加することで、蛍光の光が材料内部まで届き硬化性を向上させる。
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